はじめに
就労移行支援・就労継続支援A型及びB型の事業所では、利用者が安心して働けるような環境を整えるために、設備基準や安全基準が設けられています。これには、消防法や建築基準法といった法律も関係しており、万が一の事態にも対応できるような配慮が必要ですこの記事では、初心者の方でも分かりやすいように、就労継続支援A型・B型の施設基準、消防法、建築基準法について詳しく解説します。さらにその理由や実例を説明していきます。
設備基準の重要性
設備基準は、利用者が安心して働ける環境を確保するためのガイドラインです。就労継続支援事業所は、利用者が集団で作業を行うため、十分な安全対策が決められています。日常の安全を確保し、万が一の災害時にも正しく避難ができる環境が整えられています。
例えば、学校の教室が広く、火災報知や消火器が正しく配置されているのと同じように、福祉施設でも安全性が確保されていることで利用者が安心して活動できます。
消防法上の確認事項
□所在地を管轄する消防署予防課へ必要な設備について確認します。
→事業所の規模(階数、面積等)、利用者数などにより必要な設備が変わります。
→収容人員が一定の人数以上となる場合は、「防火管理者」の選任と「消防計画」の作成も必要となります。
→テナントビルの一室を賃貸する場合、ビル全体に対して、厳しい基準による消防設備を設置しなければならない場合があります。
□消防設備の設置の可否について所有者さんに確認
→テナントビルの一室を借りる場合で、建物全体に消防設備の設置が必要な場合は、費用負担についても確認することが必要です。
消防設備の設置工事については「消防設備士」しかできませんので、消防設備士の確保も重要です。
就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)事業の建物は、消防法令上、消防用設備の設置基準が厳しい特定防火対象物に指定されています。
定防火対象物は(1)項から(20)項に分類されており、就労移行やA型、B型は「(6)項ハ」に該当します。
主に必要な設備としては、避難誘導灯、自動火災報知設備、消火器等がありますので下記を参考にして下さい。
(6)項ハ該当 | |
消火器 | 全ての施設 |
避難誘導灯 | 全ての施設 |
自動火災報知機 | 延べ床面積300㎡以上 |
スプリンクラー | 延べ床面積6,000㎡以上(平屋建てを除く) |
防火管理者 | 収容人員30人以上 |
都市計画法上の確認事項
□物件の所在地の用途地域を確認
→市街化区域内(用途地域)なのか市街化調整区域内なのかについて、自治体の都市計画課又はインターネット上で確認しましょう。
→市街化調整区域内の建物の場合は、都市計画法上の用途変更の手続き等が必要となる場合があるため避けた方が無難です。
□都市計画法上の手続きの有無の確認
→市街化区域の場合は、自治体の都市計画課等で確認できます。
建築基準法上の確認事項
①延べ床面積が200㎡以下の物件であるかどうか。
→200㎡を超える場合は建築基準法上の用途変更が必要となります。用途変更は数十万の費用が掛かるので、なるべく200㎡以下の物件を探しましょう。80㎡程でも開業は開業は可能ですが、軽作業等を生産活動で実施する場合はかなり狭く感じるでしょう。生産活動も常に同じ業務でないことを想定すると、120㎡以上は確保したいところです。
②建築確認及び完了検査を受けてているかどうか。
→少なくとも「建築確認」を受けていることが必要となります。
→「建築確認」も受けていない場合は、建築士からの証明が必要となり数万円の費用が発生します。
事業所の立地について
①設置しようとする施設は利用者を集めやすいエリアかどうか。 →駅から徒歩5分圏内、自転車・バイク通勤可能は集客しやすい。 →通行量の多い幹線道路沿い、最寄り駅から徒歩15分以上は集客しにくい。
②近隣住民や自治会長さん等からの理解を得られるかどうか。
→事業者指定の要件ではないが、障がいのある方に対する偏見もあるため、きちんと住民説明会又は近隣の方への挨拶を行うべきでしょう。
③従業員や送迎用の駐車スペースを確保できるかどうか。
→近隣住民の方々の迷惑にならないよう駐車スペースの確保が必要です。
④洪水浸水想定区域や土砂災害計画区域に該当しないかどうか。
→該当する場合、「避難確保計画」を作成し、「避難訓練」を実施しなければなりません。
賃貸借契約にあたっての確認事項
物件の契約の前に下記を確認。
①使用用途について
→障がい福祉サービス事業で使用できることを明確にしておく必要があります。所有者さんの意向により障害福祉サービスはNGの場合があります。
②契約期間について
→契約期間が満了する前に双方異議がなければ「自動更新」できる内容にしておきましょう。
③契約の時期について
→所有者さんの意向もあるかと思いますが、できれば、契約は事前協議が終えてからとしてもらってください。
④家賃について
→物件を契約してから事業開始までに時間がかかる場合もありますので、
家賃の発生日についてもなるべく遅らせられるよう交渉してみてください。
→事業開始後の収支計画をしっかり立てて、設定家賃で採算が合うのかどうかを確認してください。
採光と換気基準
採光基準:床面積に対して「7分の1以上」
換気基準:床面積に対して「20分の1以上」
採光基準と換気基準を満たす必要のある設備は以下となります。 訓練・作業室 多目的室 相談室
まとめ
管轄の消防署で必要な消防設備等の確認をしましょう。 都市計画法担当部署等で用途地域の確認をしましょう。 建築基準法の担当部署で用途変更の必要性を確認しましょう。
条例や地域のルールに従って決定されます。開業や移転の際には指定権者との事前相談で確認してください。
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