※こちらの記事は、就労移行支援及び就労継続支援A型・B型を想定した記事内容となります。
定員超過利用減算とは?
定員超過利用減算とは、介護施設や障害福祉施設で、定められた定員を超えてサービスを提供した場合に、事業者に対する報酬が減額される制度です。この減算制度は、利用者に対して適正なサービスを提供し、施設全体の質を保つために設けられています。この減算は「1日あたりの超過」と「3ヶ月平均での超過」の2つとなります。
定員超過が発生する施設では、介護報酬が減額され、経営に大きな打撃を受ける可能性があります。そのため、定員管理を徹底することは施設運営の中で非常に重要な要素となります。
なぜ定員超過利用減算が導入されたのか?
定員超過利用減算が導入された背景には、施設が適正な人数以上の利用者を受け入れることで生じる様々な問題があります。具体的には、次のような理由からこの制度が導入されています。
サービスの質の低下
施設が定められた定員以上の利用者を受け入れると、サービスの質が低下するリスクが生じます。介護や福祉サービスは、利用者一人ひとりに対して細やかなケアやサポートが求められますが、定員を超えてしまうとスタッフが十分な対応をすることが難しくなります。
スタッフの負担増加
スタッフの負担が増大することも、定員超過の大きな問題です。特に介護や福祉の現場では、スタッフ一人あたりの負担が大きくなりすぎると、十分なサービスが提供できなくなるばかりか、スタッフ自身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。スタッフの離職率が高まる原因にもなり、結果的に人手不足が加速し、施設全体の運営に支障が出る恐れがあります。
利用者の安全確保
また、定員を超えてサービスを提供すると、利用者の安全確保が難しくなることがあります。特に高齢者や障害者を対象とした施設では、細心の注意を払ったケアが必要です。定員超過が続くと、転倒や体調不良などの事故が増加する可能性があり、最悪の場合は利用者の生命に関わる問題にもつながりかねません。
こうした背景から、定員を適正に守りながらサービスを提供するために、この定員超過利用減算制度が導入されています。
「1日あたりでの超過」「3ヶ月平均での超過」の例と計算
定員超過利用減算の適用は、事業者が定められた定員を超過して利用者を受け入れた場合に発生します。ここでは、実際にどのような基準で減算が行われるのか、その仕組みと計算方法について詳しく解説します。
1日あたりの利用者数が定員の150%を超過した場合
超過した当日の利用者全員分が基本報酬の単位数の70%の算定となります。
20人定員×150%=30人
つまり、定員20名に対し30人まで受け入れ可能となります。
過去3ヶ月間の平均利用者数が定員の125%を超過した場合
過去3ヶ月間の平均利用者人数が定員の125%を超過すると、その翌月1ヶ月間は利用者全員について基本報酬の70%しか算定されません。
・利用定員20名で1ヶ月の開所日数が22日の施設のケース
20人×22営業日×3ヶ月=1,320人
1,320人×125%=1650人(受け入れ可能延べ利用者数)
3ヶ月の総延べ利用者数が1,651人から減算対象となります。
多機能事業所等における取り扱い
複数のサービスまたは昼間のサービスごとに、当該利用定員を超える受け入れ可能人数を算出します。
例えば、利用定員40人の多機能型事業所で生活介護で利用定員20人、自立訓練10人、B型10人だった場合は次の通りの計算となります。1ヶ月の開所日数は22日のケース。
【1日あたりでの超過計算】
生活介護:20人×150%=30人(10人まで受入れ可能)→31人から減算対象 自立訓練:10人×150%=15人(5人まで受入れ可能)→16人から減算対象 就労継続支援B型:10人×150%=15人(5人まで受入れ可能)→16人から減算対象
【3ヶ月平均での超過計算】
生活介護:20人×22日×3ヶ月=1,320人 1,320人×125%=1,650人 1650人-1320人=330人 →330人が利用定員を超える受入れ可能人数
自立訓練:10人×22日×3ヶ月=660人 660人×125%=825人 825人-660人=165人 →165人が利用定員を超える受入れ可能人数
就労継続支援B型:10人×22日×3ヶ月=660人 660人×125%=825人 →165人が利用定員を超える受入れ可能人数
定員管理の重要性:減算が与える影響
定員管理をしっかりと行わなければ、施設運営にさまざまな悪影響を及ぼします。ここでは、具体的にどのような影響が生じるのかを見ていきましょう。
経営への影響
まず、経営への影響は非常に大きいです。前述のように、定員超過利用減算が適用されると、報酬が大幅に減額されます。これにより、施設の収益が減少し、スタッフの給与や設備の維持、サービスの質を保つための投資に影響が出る可能性があります。
コメント