実地指導(運営指導)の準備と対策とは?~就労継続支援A型・B型、就労移行支援でのスムーズな対応方法~

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はじめに

就労継続支援A型・B型や就労移行支援の事業所運営では、自治体による実地指導(運営指導)が避けて通れない重要なプロセスです。実地指導は、事業所が法令やガイドラインに基づいて適切に運営されているかを確認するために行われます。

この記事では、実地指導の概要準備すべき項目、そして指摘を受けないための具体的な対策について解説します。スムーズに実地指導を乗り越え、事業所運営の質を高めるためのヒントをお届けします。

1. 実地指導(運営指導)とは?

実地指導は、事業所が適切に運営されているかを確認するため、自治体などの行政機関が行う監査の一種です。以下の目的で実施されます。

  • 法令遵守の確認:障害者総合支援法や運営基準に基づいた適切な運営が行われているかを確認。
  • サービスの質向上:利用者への支援が適切であるか、事業所の支援体制を点検。
  • 公費の適正使用確認:国や自治体から支給される報酬が適切に利用されているかを確認。

2. 実地指導における指摘事項の例

2.1 チェックリストとよくある指摘事項

項目 チェック 内容等
1・運営規定
運営規定を変更する場合は指定権者へ変更届が必要です。実地日までに最新の運営規定にすることが重要です。
2・勤務予定実績表 就労継続支援A型の勤務予定実績表は人員配置基準をクリアしているかどうかを判断するために重要な書類。毎月の「予定」と「実績」を必ず作成し、ファイリングして保管する。人員配置基準をクリアしていない場合には、「サービス管理責任者欠如減算」や「サービス提供職員欠如減算」に該当。
3・タイムカードや出勤簿 タイムカードや出勤簿などの実際の勤務状況がわかる書類と上記の勤務予定実績表(勤務形態一覧表)の「実績」記録との整合性をチェックすることによって本当に勤務していたかどうかを確認されます。
4・従業員の雇用状況がわかるもの
労働条件通知書や雇用契約書、就業規則の準備
雇用契約書や労働条件通知書などを確認することで、会社と雇用関係にあるスタッフを配置しているかどうかを確認するため。就業規則については、常勤か非常勤かの根拠規定が就業規則になる。そのため、1週間の所定労働時間の記載を確認するようにしましょう。明確に「週35時間」と記載する方が無難。
5・従業者の資格証 研修の修了証や国家資格の資格証のコピー。従業員台帳(履歴書等のファイルと一緒に管理しておく)
6・従業者の守秘義務が確認できる書類 利用者さんの情報や事業所の情報を外部に漏らさないようにする守秘義務がある。そのため、スタッフを雇用する際には「機密保持の誓約書」を提出してもらう。誓約書だけでなく、就業規則や雇用契約書にも機密情報や個人情報の取扱い方法を明記しておく。
7・従業者の健康診断の写し 労働安全衛生法に基づいて「雇用時」と雇用後は「年1回」の健康診断を受診する必要がある。常勤者はもちろん所定労働時間の3/4以上の時間を勤務する非常勤者も事業所の費用で受診する必要があり。健康診断については、受診したことを記録しておくとともに、事業所の費用で受診したことを証明するために、病院からもらった領収書を保管しておく。
8・従業者の給与の支払いが確認できるもの 賃金台帳や給与明細書を保管しておく。賃金規定も含めて。福祉・介護職員処遇改善加算を算定している場合は、どの項目で賃金改善を行っているかを確認される場合があり。指定権者に提出した福祉・介護職員処遇改善加算の「計画書」と「実績報告書」は必ず保管すること。
9・業務日誌 労継続支援A型の業務日誌については決められた書式はありません。ただ、業務日誌は事業を管理するうえでも必須の書類となる。実地指導でも確認される書類です。
10・各種マニュアル及び指針
事業所実態に即したマニュアルが必要。
・事故対応マニュアル
・緊急(急病)時対応マニュアル
・BCPの策定(感染症含む)
・苦情相談対応マニュアル
・虐待防止に関するもの、身体拘束等の適正化に関するもの
11・苦情(要望・相談)解決に関する記録 就労継続支援A型のサービス提供により苦情が発生した時のために、苦情相談対応マニュアルを整備し、苦情(要望や相談も含む)があった場合は、その記録を残し、改善に向けた取り組みに活かせるようにしましょう。
12・事故やひやりはっと報告に関する記録 適切に記録し、その原因を解明し、再発を防ぐための対策を講じるようにする。ひやりはっとの事例は定期的に会議で検討するなどして大きな事故にならないように対策を取るようにする。
13・研修に関する記録 人権研修や内部研修、外部研修等の記録。利用者の人権擁護、虐待防止の観点から。
14・車両運行記録、車検証の写し 送迎サービスを利用している場合のみ
15・医療機関との契約書 契約書や協定書の原本。連携記録書も。
16・平均利用者数調書
新規で指定を取得した場合は下記の計算となる
①指定時から6ヶ月未満の実績→利用定員の90%
②指定時から6か月以上1年未満の実績→直近6ヶ月の延べ利用者人数÷直近6か月間の開所日数
③指定時から1年以上の実績ができた→直近1年間の延べ利用者人数÷直近1年間の開所日数
④指定時から1年以上経過し、前年度(前年4月1日~翌年3月31日)までの実績が出来た
→前年度(前年4月1日~翌年3月31日)の延べ利用者人数÷前年度の開所日数
17・非常災害対策に関する書類
・避難訓練実施記録
・消防計画(消防マニュアル)
・水害時の避難確保計画
事業所は少なくとも年に2回以上定期的に避難、救出その他必要な訓練を行う。
18・生産活動にかかわる賃金の支払いの根拠がわかる書類 利用者側の賃金規定や請負契約書等
19・重要事項説明書、利用契約書、個人情報関連 左記書類と合わせて、利用者の家族からもあらかじめ文書による同意を得ておくことが無難。
20・利用者の受給者証の写し
国保連へ訓練等給付を請求する際に必要な項目あり。
支給期間の更新管理も忘れずに対応すること。
契約内容報告書は市町村に提出が必要。必ず控えを保管しておく。
22・個別支援計画・アセスメント・モニタリング記録 就労支援A型のサービスを提供するためには、一連の流れに沿ったサービスの提供が必要。就労継続支援A型の個別支援計画の作成プロセスは、アセスメント→個別支援計画の「原案」の作成→支援担当者会議→正式な個別支援計画の説明・同意・交付→モニタリングという流れ。※支援担当者会議が抜けると個別支援計画の未作成と判断され訓練等給付が減算される可能性あり。
23・サービス提供記録 日々、作成更新して保管すること
24・サービス担当者会議に係る記録 相談支援事業所が利用者さんの相談支援を行っている場合、相談支援事業所の相談支援員と就労継続支援A型事業所のサービス管理責任者とでサービス担当者会議が行われます。そのサービス担当者会議の議事録を保管しておく必要があります。
25・訓練等給付費等の明細書の写し 就労継続支援A型の事業所の各月の売上や利用者さんごとの明細がわかる重要な書類。プリントアウトしてファイリングし、大切に保管する。
26・サービス提供記録実績表 厚労省が最新の書式をアップしている。サービス提供実績記録票の「利用者確認欄」については、原則としてサービス提供の都度、利用者さんに対して実績記録票の記載内容を提示し、確認を求めなければならない。
27・法定代理受領 就労継続支援A型の事業所に支払われるサービスの利用料(訓練等給付費)は、本来は国から利用者に一度支払われてその後に利用者から就労継続支援A型事業所に支払われるという流れになるが、実務的には、就労継続支援A型の事業所が利用者の代わりに国保連に請求し、直接、就労継続支援A型事業所にサービス利用料(訓練等給付費)が支払われるとう流れになります。就労継続支援A型の事業所は、サービスの利用料(訓練等給付費)の支払いを受けた場合は、利用者さんごとに以下のような「法定代理受領の通知」を利用者さんに交付しなければならない。
28・各種加算、スコア評価に係る算定要件を満たしていることが確認できる書類 就労継続支援A型の事業所として、スコア評価の根拠資料や加算の算定要件を満たしていることを証明できる帳票類を整備しておかなければなりません。

実地指導では、以下のような項目が指摘されることがよくあります。

  • 書類不備:支援計画書や契約書、記録書類の未整備や内容の不足。
  • 法令違反:職員配置基準の未達成や設備基準の不備。
  • 報酬請求の誤り:過請求や不適切な請求。
  • 支援の質の問題:利用者のニーズに合った支援が行われていない。

2.2 指摘事項が事業所に与える影響

指摘事項が多い場合、以下のような影響を受ける可能性があります。

  • 改善指導の実施:指摘事項を改善するための追加指導や報告書の提出。
  • 報酬減算:重大な違反がある場合、報酬が減算される。
  • 事業停止の可能性:深刻な問題がある場合、事業停止命令が出される場合もある。

3. 実地指導に向けた準備

3.1 書類の整備

実地指導とは、行政機関が指定基準等に定められた介護サービスの質や運営体制、介護報酬の請求や加算の算定状況などに関して書類等を確認するものです。

行政機関から、電話(無い場合もあり)があり、その後に実施指導の通知書が届きます。実地指導の日時は事前に分かっているので、事前の準備が重要です。

適切な書類整備は、実地指導をスムーズに進めるための基本です。

  • 支援計画書:利用者ごとの個別支援計画が最新の状態で作成されていること。
  • 記録書類:サービス提供記録や相談記録が正確に記録され、保存されていること。
  • 契約書・重要事項説明書:利用者と締結した契約書が適切に保管されていること。

3.2 人員配置基準の確認

職員配置基準を満たしているかを確認し、必要な場合はスタッフの増員や資格取得の支援を行います。

  • 資格保有者の確認:サービス管理責任者や職業指導員など、必要な資格を持つ職員が配置されていること。
  • 勤務記録の整備:勤務時間が適切に記録され、基準を満たしていること。

3.3 報酬請求の適正化

報酬請求において、誤りや過請求がないかを事前に確認します。

  • 請求内容の精査:利用者ごとの支援内容や報酬請求が一致していることを確認。
  • 電子請求システムの利用:電子システムを活用して、請求ミスを防ぐ。

4. 実地指導中の対応方法

4.1 説明責任を果たす

実地指導中は、行政側の質問に対して適切に回答し、必要な書類を迅速に提出します。

  • 対応者の選定:事業所の運営状況に詳しいスタッフを対応担当者として配置。
  • 記録の提示:求められた書類を速やかに提示できるように準備。

4.2 チームでの対応

実地指導には、複数の職員で対応することで、指摘事項への迅速な対応が可能になります。

  • 担当者の役割分担:書類準備、説明対応、記録管理などを役割分担して進める。
  • 即時対応体制の構築:指摘事項があった場合に、即座に対応策を提案できる体制を整える。

5. 実地指導後の対応と改善

5.1 指摘事項への対応

実地指導後に指摘事項があった場合は、速やかに改善計画を作成し、実行します。

  • 改善計画書の提出:指摘事項に対する改善策を計画書としてまとめ、期限内に提出。
  • 定期的な見直し:改善計画を実行し、進捗状況を定期的に確認。

5.2 事業所全体の改善

実地指導での経験を活かし、事業所全体の運営改善に取り組みます。

  • スタッフ教育の強化:法令や運営基準に関する研修を実施し、スタッフの知識を向上。
  • 内部監査の実施:定期的に内部監査を行い、書類整備や支援内容を点検。

6. 実地指導を成功させるポイント

6.1 継続的な準備

実地指導は突発的に行われる場合もあるため、日常的に準備を進めておくことが重要です。

  • 書類の更新:支援計画書や記録書類は随時更新し、最新の状態を保つ。
  • スタッフ間の情報共有:実地指導に関する情報や対応方法を定期的に共有。

6.2 プロのサポートを活用

外部のコンサルタントや専門家のサポートを受けることで、準備作業を効率化できます。

  • 法令遵守の確認:専門家に依頼し、運営基準への適合性を確認。
  • シミュレーションの実施:模擬的な実地指導を行い、対応スキルを向上。

まとめ

実地指導(運営指導)は、事業所運営の適正性を確認するために重要なプロセスです。日常的な準備と改善に努めることで、実地指導をスムーズに乗り越えることができます。また、実地指導を単なる監査ではなく、事業所運営の質を高める機会と捉えることが重要です。

適切な準備と対応により、就労継続支援A型・B型、就労移行支援の事業所がより良い支援を提供し、利用者と地域社会に貢献できるよう努めましょう。

就労コンサル MATSUBARA
就労コンサル ishikawa

はじめまして。
コンサル担当のI.Nです。
私は大学を卒業してから約20年間、人材紹介・派遣業界に携わってきました。
新規営業からスタートして既存営業、責任者とステップを踏んできました。
一般の紹介会社や派遣会社にも何かしらの障害を持った方々から相談を受けてきました。
そんな時に当社代表の松原と出会い、転職を決意してコンサル部門を担当しております。
細かい行政ルールを覚えることも大切ですが(ここはコンサルに任せてください)
重要なことは、集客・生産活動収入(A・B)・利用者就職のバランスを考えて対応することです。
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